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青森地方裁判所 昭和42年(わ)57号 判決

被告人 奈良尚

昭五・二・二五生 国家公務員(休職中)

主文

被告人は無罪。

理由

一、本件公訴事実は、

被告人は農林技官で、青森営林局むつ営林署庶務課労務係に勤務する一般職の国家公務員であるが、

第一、日本共産党を支持する目的をもつて、昭和四一年一二月下旬、むつ市大字田名部字本町一二番地岸本庄司方において、伊勢田つまに対し、日本共産党の機関紙たる新聞「赤旗」号外(一九六六年一二月一五日付)を二部配布したほか、別紙一覧表記載(略)のとおり、同月二六日ころから翌四二年一月八日ころまでの間、前後七回にわたり、同市大字田名部字小川町六〇番地同市消防本部事務室等七箇所において、橋本幸之進ら六名に対し、日本共産党の機関紙たる新聞「赤旗」号外(一九六六年一二月一五日付または一九六七年一月一日付)を配布し、

第二、昭和四二年一月二九日施行の衆議院議員選挙に際し、青森県第一区から立候補した日本共産党所属大沢喜代一(通称大沢久明)を支持する目的をもつて

一、同月八日午後二時ころ、むつ市大字田名部字明神町一七番地明神町集会所に設けられた同選挙用ポスター掲示場に同候補の同選挙用ポスター一枚を掲示し、

二、同月一一日午前一一時三〇分ころ、下北郡東通村大字厳屋字往来一一五番地三国徳太郎方倉庫に設けられた同選挙用ポスター掲示場に同候補の同選挙用ポスター一枚を掲示し、

もつて、政治的目的のために人事院規則で定める政治的行為をしたものである。

というものであり、右事実は関係証拠により別紙一覧表中番号3の配布場所をむつ市大字田名部字小川町四五番地系井貞行方店舗と訂正するの外、全部これを認めることができる。すなわち(証拠略)

を綜合すれば

1  被告人は、昭和二二年一二月二八日青森営林局管内佐井営林署に検尺手として採用され、昭和二三年八月二三日、むつ営林署に配置換えとなり、次いで同二四年三月一日雇となり、同二六年一二月三日以降約三年間結核療養のため入院生活を送つたのち、同三一年一月一日農林技官となり、同年一〇月一六日むつ営林署経理課勤務、同三六年一〇月一日同署庶務課給与係勤務、同三七年四月一日労務係兼厚生係勤務を経て、同四〇年四月一日から同課労務係として勤務していた一般職の国家公務員である。

2  被告人は、公訴事実第一記載の日時場所において、昭和四一年一二月下旬から同四二年一月上旬の間むつ市内で前後八回に亘り同記載の伊勢田つま外六名に対し、いずれも勤務時間外の夜間を利用して同記載部数の赤旗号外一九六六年一二月一五日付または一九六七年一月一日付を各配布し(ただし一部配布場所を訂正すべきこと前記のとおりである)、および昭和四二年一月八日(日曜日)、同月一一日(当日被告人は終日年次休暇の許可を与えられていた)の両日公訴事実第二記載の場所において同記載の衆議院議員選挙につきむつ市又は東通村選挙管理委員会が各設置管理する公営掲示場に、同選挙に際し青森県第一区から立候補した日本共産党所属大沢喜代一(通称大沢久明)の選挙用ポスターを各掲示したのであるが、被告人は、かねて日本共産党の政策、綱領を支持して同党に入党し、同党青森県委員会傘下の下北地区委員会に属する党員であつて、当時いわゆる総選挙を勝ち抜くために日本共産党においても政策の広報、宣伝等党勢拡張に努めていた時期であつて、被告人も同党の組織的活動の一還として日本共産党を支持し或いは同党所属立候補者を支持する目的で、前記のように機関紙配布や、同党立候補者の選挙用ポスターの掲示を継続反覆して行なつたものである。

以上の事実が認められ、これらの事実関係のもとにおいては、被告人の右行為は、国家公務員法(以下国公法と略称)第一〇二条第一項により禁止されている人事院規則一四―七(以下人規一四―七と略称)第五項第一号、第三号、第六項第七号、第一三号所定の政治的行為にあたり、国公法第一一〇条第一項第一九号の罰条に該当するというべきである。

二、被告人および弁護人は右法規の合憲性を争い、殊に罰則の適用は違憲であるとの趣旨を主張するので、この点について考察する。

1、国公法第一〇二条第一項は「職員は、政党または政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、もしくは受領し、または何らの方法をもつてするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除くほか、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない。」と規定し、これを受けた人規一四―七は、第五項に政治的目的として第一号ないし第八号までを、第六項に政治的行為として第一号ないし第一七号を掲記し、一般職に属する国家公務員の全てに対し極めて広汎にわたつて政治的行為を禁止制限しており、しかもこれは人規一四―七第六項第一六号の場合を除いては、勤務時間外の行為についても適用されることになつており、(人規一四―七第一項、第四項)国公法第一一〇条第一項第一九号は、右の禁止制限に違反した者に対し、同法第八二条による懲戒処分に止らず、三年以下の懲役又は一〇万円以下の罰金に処する旨規定していることが明らかである。

2、かように国公法第一〇二条が一般職に属する国家公務員につき政治活動を制限することにしたのは「国公法の適用を受ける一般職に属する国家公務員は、その職務の遂行にあたつては、厳に政治的に中立の立場を堅持し、いやしくも一部の階級もしくは一派の政党または政治団体に偏することを許されないものであり、かくしてはじめて一般職に属する公務員が憲法第一五条にいう全体の奉仕者であるゆえんも全うされ、また政治にかかわりなく、法規の下において民主的かつ能率的に運営せらるべき行政の継続性と安定性が確保されうる」からであることは、すでに最高裁判所昭和三三年三月一二日判決、同年四月一六日判決のそれぞれ示すところであり、同裁判所昭和三三年五月一日判決は、人規一四―七につき右両判決の趣旨に照らし「人規一四―七は、国公法第一〇二条第一項に基づき、一般職に属する国家公務員の職責に照らして必要と認められる政治的行為の制限をしたものであるから、実質的に何ら違法違憲の点は認められないばかりでなく、人規には国公法の規定によつて委任された範囲を逸脱した点も認められない。」としている。しかしながら、右最高裁判決は、いずれも憲法第一四条をめぐる国公法第一〇二条の合憲性判断であり、本件の論点となつている公務員の政治活動の制限と憲法第二一条の保障する表現の自由との関係や憲法第三一条との関連において、国公法第一一〇条第一項第一九号の罰則の適用についての憲法判断は直接にはなされていないと解されるのであつて、この問題についてなお検討の必要が存する。

3、そもそも政治活動を行なう国民の権利は憲法第二一条の保障する市民的自由権の一つである表現の自由に属するものであるが、表現の自由は議会制民主主義の根本原理であり、基本的人権中でも極めて重要な権利であるから、最大限の尊重がなされなければならない。もとより、表現の自由も絶対無制限のものではなく、前記のように、全体の奉仕者であるゆえんを全うし、かつ政治にかかわりなく法規のもとで民主的、能率的に運営されるべき行政の継続性と安定性を確保するためには、国家公務員がある程度の制約に服すべきことは一般論としては当然のことといわなければならない。しかしながら国家公務員も一面市民としての生活を営んでいる以上市民として政治活動の自由をできる限り享受しうるよう配慮されるべきであるから、その制約の程度は右の目的を達成するための合理的範囲に止めるべきであるし、特に制約違背に対する制裁は当該行為との均衡を考慮し、必要最小限度に止め、政治活動の自由を広汎かつ完全に抑圧する結果となることを避けるよう慎重な取扱いを必要とするというべきである。

4、昭和四一年一〇月二六日最高裁判所は、いわゆる全逓中郵事件について「………国家公務員といえども憲法第二八条にいう勤労者にほかならない以上、公務員は全体の奉仕者であるとする憲法第一五条を根拠として、公務員に対して右の労働基本権を全て否定するようなことは許されない。………公共企業体等労働関係法(以下公労法と略称)そのものとしては、争議行為禁止の違反について刑事制裁はこれを科さない趣旨であると解するのが相当である。公労法第三条で刑事免責に関する労働組合法第一条第二項の適用を排除することなく、争議行為にも適用することとしているのは、この趣旨を裏付けるものということができる。そのことは、憲法第二八条の保障する労働基本権尊重の根本精神にのつとり、争議行為の禁止違反に対する効果又は制裁は必要最小限度にとどめるべきであるとの見地から、違法な争議行為に関しては、民事責任を負わせるだけで足り、刑事罰をもつて臨むべきではないとの基本的態度を示したものと解することができる。……」と判示し、さらに昭和四四年四月二日いわゆる都教組事件につき、同旨の判示をするに至つており、右は経済自由権に関するものであるが、右判例の趣旨は政治的自由権の制限についても妥当するものと考えられる。

5、この点につき、旭川地方裁判所は、同庁昭和四三年(わ)第一六号国公法違反被告事件について、同年三月二五日郵政事務官がした国公法第一〇二条第一項、人規一四―七第六項第一三号所定の政治的行為につき判断した無罪判決の中で、国公法就中右法条の制定経過、外国法制との比較、五現業職員に対する労働関係上の規制の変化、昭和二九年九月の臨時行政調査会の「公務員に関する改革意見」、地方公務員に対する政治活動の制限禁止の規制との差異等につき詳細審究を加えたうえ、国家公務員の政治活動の種々の態様を比較しながら、これが公務員の中立性、行政の継続性、安定性に及ぼす影響弊害を検討した結果、「非管理職である現業公務員でその職務内容が機械的労務の提供に止まるものが、勤務時間外に、国の施設を利用することなく、かつ職務を利用し、若しくはその公正を害する意図なしに人規一四―七第六項第一三号の行為を行なう場合、その弊害は著しく小さいものと考えられるのであり、このような行為自体が規制できるかどうか、或いはその規制違反に対し懲戒処分の制裁を科しうるかはともかくとして、国公法第八二条の懲戒処分ができる旨の規定に加え、三年以下の懲役又は一〇万円以下の罰金と言う刑事罰を加えることができる旨法定することは、行為に対する制裁としては相当性を欠き、合理的にして必要最小限度の域を超えているものといわなければならない。」と説示しているのであつて、当裁判所も全面的にこの見解を肯定すべきものと考える。その詳細は同判決理由四ないし九に説示するとおりである(下級裁判所刑事裁判例集第一〇巻第三号二九三頁以下参照)。そして右判決はその控訴審たる札幌高等裁判所昭和四四年六月二四日判決(同庁同四三年(う)第一三五号)において維持され、徳島地方裁判所も同庁昭和四〇年(わ)第二三九号国公法違反被告事件につき、同四四年三月二七日前記旭川地裁判決と同趣旨の見解を説示して郵政事務官がした人規一四―七第五項第一号、第六項第八号に該当する政治的行為につき無罪判決をしたことは周知の事実である。

三、そこで本件についてみるに

1、被告人の勤務する営林署は、農林省の外局である林野庁の地方支分部局の一つとして、国有林野および公有林野等官行造林地の造林および営林を実施すること、民有林野の造林および営林を指導すること、国有林野および公有林野等官行造林地の産物および製品の生産および処分を行なうこと、立木の取得、加工および処分を行なうことを所掌事務としているが(農林省設置法第七〇条)、元来林野庁は基本的には国が企業として経営する国有林野事業を実施する現業官庁と解されるのであつて、公共性は有するものの民間企業と大差のない非権力的性格を有し、一般の国家公務員と異なつてその職員の労働関係は三公社とならび五現業の一つとして公労法によつて調整されていることも一般の行政官庁とは異なつた特徴となつているのである。従つて、その地方支分部局の一つである営林署もまた現業官庁としての基本的性格を有するものである。この意味において、東京地方裁判所が同庁昭和四〇年(わ)第五五五号国公法違反等被告事件について同四四年六月一四日にした有罪判決の事例である総理府統計局の場合とは性格を異にするものというべきである。

2、前掲被告人の供述又は供述記載部分および受命裁判官の証人堀江彦文、大沢豊治に対する尋問調書、むつ営林署長からむつ警察署長あての捜査関係事項照会書についてと題する回答書を綜合すれば、被告人は本件当時農林技官としてむつ営林署庶務課労務係に勤務する非管理職たる一般職の国家公務員であること、営林署庶務係の所掌事務は農林省組織規程第五一条により、一、人事および文書に関すること、二、署長の官印および署印を管守すること、三、経費および収入の予算決算および会計に関すること、四、国有財産および物品を管理すること、五、担当区に関すること、六、国有林野に関すること、七、国有林野および公有林野等官行造林地を管理すること、八、森林警察に関すること、九、庁中取締に関すること、一〇、営繕に関すること、一一、林野共済組合に関すること、一二、前各号に掲げるものの外他課の所掌に属しない事務に関すること、と定められていること、当時むつ営林署長は右規程(現行同第二九七条)に基づきむつ営林署の事務分掌および組織に関する規程を制定し、庶務課には庶務係、厚生係、労務係の三係をおき、庶務係は職員の人事に関すること、国有財産の管理に関すること、民有の土地建物の借上げに関すること、森林警察および被害に関することなどの事務を、厚生係は職員の安全、衛生ならびに医療に関すること、公務員宿舎および労務施設に関すること、林野庁共済組合に関すること、その他福祉厚生に関することの事務を掌り、労務係は職員の結成する労働組合との団体交渉およびそれらの団体に関すること、作業員の雇用および服務に関すること、職員の苦情処理に関すること、職員の給与に関すること、その他労働条件に関することの事務をつかさどることと定めていたこと(この点は証人堀江彦文の供述記載による)、被告人は右のうち労務係に属するものであるが、その現実に分担していた事務は職員(臨時雇用者を除く)の給与に関することであつて、右給与事務についてみても、労務係長、庶務課長等上司の指揮監督のもとに月給制職員の給与計算、給与支給書類の作成、職員の扶養家族認定の申請資料の調査などを行なうのであつて、これらの事務の執行に当つてはもとより裁量権、決定権は何一つもつておらず、すべて上司の決裁を得なければならず、その事務内容は俸給表、法令等により規制され、計算や法令調査等の知的判断作業を伴うものの、全く裁量の余地のない機械的事務といつてさしつかえないものであることが認められる。証人堀江彦文は、被告人は労務係内部の事務分担として、右給与事務の外上司の命によることの事務をも担当すべきこととされていたとし、右にいわゆる特命事項の例として、山火事などの非常災害の場合の応援出動や、司法警察員の捜査の補助として火災発生地点の測量の補助などを挙けるが、前者は国有林野等の管理運営上営林署職員に一般的に課せられているものと解され、被告人の分担事務とされていたといういわゆる特命事項といい得るか疑問であり、後者については労務係一般の所掌事務には含まれていないこと前認定のとおりであつて、いわゆる特命事項としても被告人にこれを所掌させることとした趣旨とは解し難く、結局特命事項というのは前記労務係の所掌する事務で、被告人の主たる分担事務たる前記職員の給与に関すること以外の事務について特に上司から命ぜられた事項をいうものと解すべく、労務係一般の所掌事務そのものは本来直接公権力の行使にあたる職務であるとか、行政作用にあたる職務を包含していないものと認められるうえ、前掲証人堀江彦文の供述によるも現実に被告人にいわゆる特命事項として所掌させた事務はなかつたし、もとより被告人が裁量権を有する職務を担当すべき地位にはなかつたことが認められる。従つて、被告人は上記の趣旨において裁量権のない単に機械的労務を提供するに止まる非管理職たる一般職の国家公務員というべきである。

3、本件赤旗の配布やポスター掲示の各所為は、いずれも勤務時間外の夜間又は休暇中ないし日曜日に国の施設を利用せずに行なわれたものであることは前記認定事実により明らかであるばかりでなく、前認定のとおり、被告人は日本共産党員として、党の組織活動の一貫として右のような赤旗配布、ポスター掲示の所為に出でたものであるが、前掲被告人の供述又は供述部分、裁判所の証人伊勢田つま、菊池末松、武川寿三、船沢繁、橋本幸之進、系井貞行、坂本富治、三浦十一、白川三四五、川島晋一に対する各尋問調書によるも被告人は本件赤旗の配布やポスターの掲示にあたり、自己の職務を利用したものでなく、被告人から本件赤旗の配布を受け、又はその場に居合わせあるいはポスター掲示を目撃した上記証人らの中大多数のものは、被告人の行為が営林署職員の行為であるが故に犯罪を構成するとか、営林署の業務に影響するのではないかなどの疑惑は抱かなかつたことが認められ、これらの事情と本件行為の規模態様からみれば、被告人の本件所為が一般市民に対し営林署の公正な運営について不安、不信、疑惑を抱かせる程度のものではなく、被告人に職務の公正を害する意図がなかつたことを認定できる。

四、以上認定説示したところから考察するに、「本件の被告人機関紙配布ないし選挙用ポスター掲示の所為のごとく非管理職の現業公務員で、その職務内容が何ら裁量権を伴わず単に機械的労務の提供に止まる一般職の国家公務員が、勤務時間外に、国の施設を利用することなく、かつ職務を利用し、もしくはその公正を害する意図なしにした人規一四―七第六項第七号および第一三号所定の行為にまで刑事罰を加えることをその適用の範囲内に予定している国公法第一一〇条第一項第一九号はこのような行為に適用される限度において、行為に対する制裁としては合理的にして必要最少限度の域を超えたものとして、憲法第二一条、第三一条に違反し、これを被告人に適用することができない」と解せざるを得ない。

五、なお、被告人および弁護人は、本件は日本共産党の選挙運動を妨害するための不当な捜査活動を基礎とし、日本共産党を弾圧する目的をもつて公訴が提起され、一般の起訴猶予基準を著しく逸脱してもつぱら被告人が同党党員であるが故に処罰を求めているものであつて、検察官の本件公訴の提起は公訴権の積極的濫用に当り違法であり、刑事訴訟法第三三八条第四号により公訴棄却の判決がなされるべきであると主張するが、関係証拠によれば、被告人の本件所為についての捜査は、当時たまたま施行された衆議院議員選挙に際し、選挙違反の取締ないし情報収集に従事していた捜査官が被告人のポスター掲示を目撃したり、「赤旗」配布を聞知したりしたことが端緒となつたのであり、あらかじめ被告人のみを目して捜査活動を遂行していた事跡は認め難いし、被告人が現職の国家公務員であつて、本件所為は一応国公法違反の嫌疑を受ける事実であり、しかもこれが単一ではないのであるから、検察官の本件公訴の提起自体が客観的に見て明らかに起訴に値しない事案であるのに、もつぱら政治的弾圧の意図をもつてなされたことが明らかな不当のものであり、公訴権を濫用したものであるとは断じ難いから、この点の被告人および弁護人の所論は採用しない。

六、右の次第で、被告人の本件所為は結局罪とならないから、刑事訴訟法第三三六条により無罪の言渡をすることとする。

よつて、主文のとおり判決する。

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